振る手

 

若者達が心霊スポットの廃病院に肝試しに行った。

めざす病院は森林の中にあるため昼間でも辺りは薄暗く、外観はぼろぼろで薄気味悪い。近くで見ると、かなり怖い印象であった。

予想外の怖さに、若者達のほとんどが怖気づいてしまった。

振る手

 


1人だけ肝の座った若者が居て、
「こんなの怖くもなんともねえよ」と啖呵を切ったのだった。


「だったら一人で中に入ってみろよ」
仲間に言われて、たった一人で病院の中へと入って行くことにした。


「じゃあ行って来るわ」と仲間に告げて、
「1階上がる毎に窓から手を振るから見てろよ」


最上階の4階まで行ってくると言って、本当に一人で中に入って行ってしまった。




若者は内心怖かったが、大口を叩いた手前、もう引き下がれない。
若者は急いで2階に行くと、ガラスの無い壊れた窓から、下に居る仲間向かって手を振った。



「楽勝ー」そう言って下を見ると、仲間達は青い顔をして黙っている。


"ほんとに一人で行ったから、みんな驚いてやがる”


勢い付いた若者は急いで3階へと向かって行った。



そして3階に上がると、早速下にいる仲間に手を振った。

「おーい!」

すると下にいる仲間は
「早く降りて来い!!早く降りて来い!!」と必死に呼び戻している。


「大丈夫だって」


仲間の忠告を無視して、構わず4階へと向かった。


4階でも同じように手を振ると、仲間達は
「もういいから早く来い!!降りて来い!!」
必死に叫んでいる。



得意顔で病院の外にいる仲間の元まで帰ると、
「大丈夫だったか!?」そう言って若者の肩をつよく掴んで来た。



「何だよ、何びびってんだよ」


訳を聞くとこう教えてくれた。


若者が2階に上った段階で、他の割れた窓から白い手のようなものが何本も伸びていて、階を上がるごとに手は増えていった。


4階に上がる頃には、病院中の窓から何本もの手が飛び出して、下の仲間に向かって手を大きく振っていたという話だ。


「だから早く帰って来いって、叫んだんだ!!」


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